FRP防水の作業工程や特徴をわかりやすく解説
FRP防水とは、ベランダや陸屋根などに施される防水工事の一種です。ウレタン防水やシート防水といった他の防水工事とは異なる特徴を持っていますが、メリットとデメリットの両面があるため、性質をよく理解してから検討することが大切です。
今回はFRP防水の特徴やFRP防水工事の基本的な工程、FRP防水工事のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
目次
FRP防水の特徴
FRP防水とは、FRP製の防水材を用いて行われる防水工事のことです。FRPとはFiber Reinforced Plasticsの頭文字を取った略称で、日本語では繊維強化プラスチックを意味します。具体的には、液状のポリエステル樹脂に硬化剤を加え、さらに補強材であるガラス繊維を混ぜ合わせて作られたものです。
FRPは強度・耐久性・耐水性・成型性など複数の性質を併せ持っていることから、浴槽や自動車、水槽、船舶、建材など幅広い用途に用いられています。建物の防水工事に使用するものは白いシート状の外観をしており、ベランダや陸屋根に敷くことで防水可能になります。
FRP防水の工法
FRP防水の代表的な仕様である「ガラスマット2プライ仕様」は、「L-FF仕様」として建築工事標準仕様書に記載されています。これは防水用ガラスマット#380を2層使用するもので、露出仕上げで歩行できることや、厚みと強度が高いことなどから、屋根やベランダ、バルコニー、プールなど幅広い用途に採用されています。
7ステップでFRP防水の工程を解説
FRP防水の工程を7つのステップに分けて解説します。
防水面を清掃する
まず、FRP防水を行う面(防水面)をきれいに清掃します。汚れが付着したまま施工すると仕上がりが悪くなってしまう他、防水面の耐久性が低下してしまうおそれがあるので、高圧洗浄機などを用いて入念に汚れを落とします。
プライマーを塗布する
プライマーとは、下地と防水層の密着性を高めるために用いるものです。刷毛またはローラー刷毛などを使用して、プライマーを防水面全体に均一に塗布していきます。
下塗り工程
防水用ポリエステル樹脂と硬化剤を調合し、攪拌して混ぜ合わせた後、刷毛などを使って均一に塗布します。
積層工程
下塗り工程完了後に実施されるのが、積層工程です。防水用ポリエステル樹脂と硬化剤を混ぜ合わせたものをむらなく塗布したら、防水面に合わせてカットしたガラスマットを上から張り付けていきます。その上から再び硬化剤を混ぜ合わせた防水用ポリエステル樹脂を塗布し、積層にします。
樹脂内部には気泡が残るため、脱泡ローラーを使って気泡を抜く作業が必要です。この工程を繰り返し行い、ガラスマットを2枚使用した防水層を形成します。なお、積層工程の間隔が一定以上空いてしまうと、防水層の剥離が起こる原因となるため、滞りなく作業を行わなければなりません。
中塗り工程
中塗り工程では、硬化剤を混ぜ合わせた防水用ポリエステル樹脂を上から塗布していきます。表面を着色する場合は、あらかじめ所定のトナーを混ぜ合わせて指定の色に仕上げておきます。
上塗り工程
防水面が硬化したら、ポリシャーやディスクサンダーなどの工具を使用して表面を研磨します。研磨を終えたら、表面を清掃し、ポリエステルの硬化を早めるためにアセトン(表面の油分を取り除く作用がある有機溶剤)を含ませたウエス(布)で防水面を拭いていきます。
次に硬化剤を混ぜ合わせた仕上げ用樹脂を塗布します。もともと顔料が入っている場合はよく攪拌してから作業を行います。トナーで着色する場合は、既定量を調合し、混ぜ合わせてから使用します。
なお、上塗り工程では、立上がり(水平面から垂直に立ち上がった部材)、役物(コーナーや端部などに使われる部材)、平場(平らな部材)の順に施工します。塗り重ねする場合は乾燥時間に注意しながら施工します。
FRP防水のメリット・デメリット
FRP防水には多くのメリットがある反面、いくつか注意しなければならない点もあります。メリット・デメリットの両方を理解してからFRP防水を検討しましょう。
ここではFRP防水のメリットとデメリットを紹介します。
メリット:防水性・耐久性が高い
FRPは継ぎ目のないシームレスな仕上がりになるため、雨水が染みこみにくく、高い防水性を誇ります。また、耐摩耗性に優れているところも特徴で、防水面の上を歩き回っても表面が傷みにくい仕様になっています。
ベランダやバルコニーは洗濯物や布団を干したり、ガーデニングを行ったりと人の出入りが多い場所なので、耐摩耗性を備えたFRP防水は最適な防水といえます。
ウレタン塗膜防水もシームレスな仕上がりになりますが、耐摩耗性はそれほど高くないため、ベランダやバルコニーにはFRP防水を選んだ方がよいでしょう。
メリット:軽量
FRP防水は強度が高い上に軽量という利点があります。防水層の重量は一般的に3~5kg/㎡程度に抑えられるため、住宅への負担が少なく、築年数が経過した古い住宅にも施工可能です。
また、軽量であることで、地震が起こった際の揺れを軽減できるため、住宅の安全性が高まります。
メリット:乾きが早い
一般的なウレタン塗膜防水の場合、樹脂が硬化するまでに時間がかかるため、最短でも施工完了までに4~5日ほどの期間が必要です。その間に雨などが降れば、さらに工期が延びてしまうこともあり、コストや手間の負担が増加します。
一方、FRP防水は樹脂の硬化が非常に速いため、何層も塗り重ねる工法を採用しても、短期間で施工が完了します。
ベランダやバルコニー程度の面積なら1~2日程度で終了するので、天候による順延などのリスクも少なく、ベランダやバルコニーが使えない期間も短縮することが可能です。
デメリット:コストが高め
FRP防水は、他の防水工事に比べると1㎡あたりの単価が割高になっています。具体的な費用は施工業者などによって異なりますがウレタン塗膜防水の相場が約3,000円~7,500円/㎡、塩ビシート防水が約3,500円~7,500円/㎡であるのに対し、FRP防水は約4,000円~9,000円/㎡が相場となっています。
ベランダやバルコニーの防水はもともとの面積が小さいので、トータル費用の差はそれほど大きなものになりませんが、単価に差が生じることは念頭に置いておきましょう。
デメリット:ヒビのリスクが高め
FRP防水は伸縮性があまり高くないため、建物の動きに追従しにくいというデメリットがあります。地震が発生して建物が揺れた際、振動に対応しきれず、ヒビが生じることがあるので注意が必要です。ヒビが入るリスクは防水面が広くなるほど高まるので、面積が広い場所を防水するのなら他の防水も検討してみましょう。
また、木造も振動の影響を受けやすいので、FRP防水は避けた方が無難です。
デメリット:定期的なメンテナンスが必要
FRPに用いられている樹脂は紫外線に弱いという性質があります。表面にトップコートを塗ることで紫外線から保護することは可能ですが、トップコートは劣化が早いため、5~7年に1度くらいのペースでの塗り替えが必要です。
FRP防水はこんな人におすすめ
FRP防水が向いている人の特徴を3つご紹介します。
防水性・耐久性を重視したい
雨や摩耗に強いベランダやバルコニー、陸屋根にしたいのなら、防水性と耐久性に優れたFRP防水がおすすめです。特にベランダやバルコニーを洗濯物干しや布団干しに利用している方、ガーデニングをしている方、デッキチェアなどを持ち込んで憩いの場にしている方は、必然的に人の出入りが多くなるので、耐摩耗性に優れたFRP防水を施した方がよいでしょう。
短期間で施工したい
防水工事を行っている間、施工箇所は基本的に立入禁止になります。普段からベランダやバルコニーを使用している場合、施工期間が長くなると日常生活に支障を来すおそれがあります。
なるべく短期間で防水工事を終わらせたいのなら、硬化までの時間が短いFRP防水が適しているでしょう。
施工部分に重い物を置きたい
ベランダやバルコニーに土の入ったプランターやエアコンの室外機など重量のある物を置きたい場合は、強度の高いFRP防水がおすすめです。前述の通り、FRP防水は耐摩耗性にも優れているため、重い物を置いたり、動かしたりしても劣化しにくく、防水面を長持ちさせることができます。
以上の条件に該当する方はFRP防水に向いていますが、一方で、防水面が木造で面積が広い(10㎡以上)場合はヒビが入るリスクが高くなるので、FRP防水には適していません。
FRP防水が自宅や自分のニーズに適しているかどうか判断に迷った場合は、プロの業者に相談し、アドバイスしてもらうことをおすすめします。
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